Toni Braxton
"More Than A Woman"
私の一番酷かった時期を覚えてる?
[2003/11/30]

本作は去年の今ごろ発売されて、その時に買ったのだけど、ずっと棚行きだった。そこまでイイ・アルバムだと思えなかったから。けど、BrandyのFull MoonやKenny&Chante達の作品や今年のMaryJ.の新作とかは聴き込んでた。本作も結婚した旦那と一緒に作った作品で、《結婚後初作品》という同じポジション。これまでの3作を持ってるのもあるし、その延長線上で本作を買った人も多いと思う。だから、やっぱりもう一度ちゃんと聴き込もうと思って。

実際、1年後に聴いても、あまり前半部分は惹かれない。そんな意味では点数をつけたらかなり低くなってしまうとは思う。けど、2曲、かなり惹かれるモノに出会った。一つ目はもちろん7:selfishです。「今まで付き合った男は自己中ばっかりだったわ。もちろん旦那は違うわよ」ってな事をインタビューで喋ってたトニブラだが、本曲では今の幸せさに浸ってる自分自身をselfishと表現してる。I don't wanna share you with anybody elseをselfishというその態度は確かに納得する面はある。個人的には「あの頃、私もselfishだったのかも・・・」という視線の方が深みがあると思うけど、トニブラの幸せさはよく伝わってくる。アルバムの中で最高なんじゃないかな。

けど、もっと惹かれたのが8:Do You Remember Whenです。歌詞的には「私達が出会った頃を覚えてる?」っていうフェーズの曲で、明るさに満ちてるハズなのに、曲が進むにつれてDeepになってくる。それがトニブラの低い声と噛み合って、独自の世界を作ってる。オーバーワーク気味になるアーシーさもなくて、擦れ具合が痛みが表現してる。いつごろ旦那と知り合ったのかは知らないです。90'Sのボーカルグループの一つ?ミント・コンディションのメンバーの1人ってのを知ってるだけなんですが、この歌を聴いてると、「私の一番酷かった時期を覚えてる?」って言葉が心に浮かんでくる。そんな意味では、そんな時期のトニブラの支えになったからこそ、結婚したんだなぁ、、、、って思えてきて、凄く嬉しかったです。

確かあまり売れなかったアルバムだと思うし、それには納得してる。旦那と組んだ事はとやかく思ってないです。けど、トニブラが主導権を握りすぎだったんじゃないかって思ってた。なんかそういうネガティブがある人なんだよネ。もちろん誰しもに何かしらのネガティブな面はあるし、トニブラはそれが分かりやすい形で過去に出た事があるってだけだと思うけど、、、相手の男がきっちりとすればいいとはあの頃、思ってた。けど、トニブラ自身が選んだのはこの答えで、それが一番表現されているのはこの歌だと感じました。傑作の誉れ高い3作目はR&Bの入口にも登録したし、そこで「結婚おめでとう」って書いた。それらの曲と同じ位に、この曲を連続リピートしてると色々と教えられる事も多い。どんどん昔を振り返りながらも、途中から「だからこそずっと一緒にいたい」って気持ちが被ってきてる。特に3分を越した頃から泣き声の色合いが多くなって、最後はDo You Do Youとうめいてる。
だから。

ガンガンに聴き込める曲を一つでも見つけると、他の曲にも自然と馴染んでくる。実は一番聴きこんでいて意味があると思うのがこの瞬間なんだよネ。ガンガンに聴き込める曲ってのは、自分自身の中の組成を少しだけでも正しい形にしてくれる。けど、サイズ自体が広がるのは他の曲群を聴き込むことだから。

そんな意味で11:And I Love Youをピックアップ。Do You Remember Whenが底からのI Love Youとすれば、この曲は何よりも意志を感じさせる。トニブラの低いアルトには数種類の声の表情があって、色気がゼロなのはこの曲でも同じ。トニブラの色気が大好きというほどでない自分としては、こちらの方に惹かれる。全編を意志でつき通したのは彼女の曲の中でも珍しいと思う。曲としてみれば傑作では無いとは思う。and I Love Youを繰り返してるだけと言われればその通りだと思う。だけど、いつにないトニブラの意志を感じて、かなり感動しました。この先の二人に希望を見出してない。だから明るくない。「どんなに悪い事が生じても、and I love You」というその態度。 確かに結婚にはこの2種類のI Love Youが必要なのだろう。
続く12:Alwaysはアルバムの締めに相応しい曲。明るさとか暗さとか意志とか楽しさとか色んな面がつめ込まれていて、最終的には2人の未来を祝福してるから。

そんな意味では、これまでのトニブラの全作を持っている人は、きっと聴きこんでえるものがあると思うよ。


素直に書くと、KennyとChanteのアルバムは全曲がアツアツでこんな面は乏しかった。だからこそ新婚旅行に似合うのだけどネ。だって、こういう事はお互いが1人でやるものだと思うから。だからネガティブに思っているわけじゃないです。BrandyのLove Wouldn't Count on Meは発表当時から少し心配してたけど、だからこそ2人の間に収まって欲しかったです。MaryJ.のアルバムは2人というより女王の風格に詰まった曲が多い。特にUltimate Relathionshipは2人どうこうの世界を超越してる。だから何も言えない。


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