Mary J. Blige
"No More Drama"
1歩引いたスタンスで、今までになく淡白な味わい (けどこのジャケットはなぁ、、)
[2001/10]

MaryJ.は常に前面に立っていたと思う。どんな事が自身に振りかかろうとも。自分自身を見詰め、表現しながら。このスタンスを失わなかったからこそ、彼女はR&B女性シンガーの名実共にTopと言われるのだろう。それだけでなく、彼女自身がその中をくぐり抜けてきた最大の理由だと思う。もし途中で1歩でも下がってしまえば、彼女はそのまま底無し沼に引きずり込まれたと思うから。

そんなMaryJ.の音楽は今まで気軽に聴けない重さがあった。だから貸しても「これは普段には聴けないよ」と言われる事も多かった。そりゃそうだろうな、、、とは思う。もちろんR&Bでの彼女の評価の高さは有名だから面と向かって中々言えないだろうけど、実際「隠れMaryJ.アンチ」は結構いるんじゃないかな? MaryJ.ファンにとっては魅力の数々が彼らにとっては合わない理由の数々に丸ごと反転するんじゃないかと思ってしまう。もしそうだとしても、「そうかもなぁ」とは思うんだよね。

ぶっちゃけた話、MaryJ.をいきなり聴いて、いきなり気に入るかどうかは、その人がどれだけ"MaryJ.的人生"に近いかどうかで決まると思う。今まで周囲に薦めて来た感想として、これが結論です。ホントか??と言われそうだが、ホントです。MaryJ.的人生とは何かと聴かれると、「うーん本HPのFavoriteを見てください」という事にしておきます。ってイキナリFavはお勧めできないんで、ここで簡単なチェック項目を。
  • 何で私はこんな糞バカな男を好きなんだろう、、、、
  • 何で私は女友達の忠告を聞けないのだろう、、、、
  • 何で久しぶりに来たあいつに対して、最初は怒れるのに、どんどん弱くなっていくのだろう、、、
これに全部該当しない女性 -> 「バカな男に惚れる女も問題よ。私だったらアシゲリかましちゃうんだから」と思う人は絶対聴いちゃいけませんw この世で1番縁遠い歌だと思いマス。もし、全部○なら、今すぐにでも買ったらどうですかってな感じです。

そんな彼女が本作でやりたかった事は

「Mary J. Bligeは悲しい歌を歌う」というイメージに挑戦したかった
本人も様々なインタビューで述べてた。だからUPの曲も取り入れて、Family Affairのビデオクリップじゃ近年になく踊ってる。見てて結構びっくりしてしまった。けど、このアルバムの性格は一見聞き流してしまいがちな、かつ、今までのMaryJ.にはないあっさりとした後半部分にあると思う。

それはまだ、人がうらやむほどの寛ぎではないけれど、彼女はそちらに向かっている
今までの作品と違い、何気なく流しておいて少しずつ染み込んでくる感覚で、結構嬉しいです。MaryJ.ファンにとっては、最初戸惑うかもしれないが(実際自分もそうだった)、結構イケルと思う。最後のTestimonyとか題名からも曲からも彼女の方向性も分るしね。ただ淡々としすぎてパンチ力が無いので、MaryJ.と親和性が低い人を振り向かせれるレベルにまでは到達してない気もする。だから、今まで"合わない"と言ってた人に「今度こそ聴いて」とは、言えないかなぁ、、

個人的にはライブ盤が1番いいラインだと思いマス。なんてったって、

パワフルかつアットホーム
あの盤はMaryJ.がホント歌うの楽しそうで、そして寛いでいて凄く良かった。ファンとの間にお互いがあれだけ寛げる空間を作りだせるのはMaryJ.ならではと思う。だから彼女のこの先の道は、あの輪を広げる事にあると思いマス。このアルバムを聴いて、それを余計実感しました。


前作は表も裏もかなりのレベルのジャケットだったけど、これは無しだろ!と思う。今までの全アルバムの中で1番パス。 「このジャケットに惹かれて買いました」って人いるのかなぁ、、というより、このジャケットは彼女の甘えのような気もする。色々喧嘩を売る事を気にしなければ。
 
"Drama"という言葉は間違ってると思います
今まであのジャケットでちょっと斜に構えていたのですが、意を決して正面から聴く事に。このアルバムを突き詰めて出てくる答えは何となく分っていたから、あんまりMaryJ.を叩きたくなかったのもある。文句をつけたくなるジャケットだけど、そのレベルなら愛嬌?で済むんだが、、、

「今までのイメージに挑戦したかった」方向性は分るけど、いい曲はNo More DramaやDestinyなんだよなぁ。確かに、2ndのBe With Youにせよ、3rdのNot Gon' Cry、4thのThe Love Never Hadの一連の流れに繋がる曲として、MaryJ.は歩いていると思う。けど、その方向性は正しいの?という感をどうしても拭えない。それはインタビューで殊更に「私はアリサじゃない Maryだ」という事を主張してた時から感じてた。Soulの女王の名を継げた事を誇りに思う事はあっても、同一視を怒るのは筋違いじゃないの?と思ったから。


何より、MaryJ.の歌を必要とする女性は口が裂けてもDramaと言えないぜ

端から見れば、「単にアホな男に引っかかったアホな女」に分類されちゃうよ。誰も憧れない話しをDramaと言えるMaryJ.は、それがR&Bの女王に結びつくからであって、それは確かに勇気を与えてくれると思うし、その時点から開ける未来もある事を示していると思うけど。

Janetと比べると、MaryJ.に対して思う事は「常に彼女は自身の事」と思うんだよなぁ。私生活を見せないようにしながらも、普遍性をKeepするJanetの方が一枚上手だと思っちゃう。だから4thの後は心配してた。彼女はそこで名実ともにSoulの女王になった訳だから、女王は普遍性に目を向ける必要があるんだと。確かにNo More Dramaという彼女の気持ちは分かる。けど、そろそろネクスト・レベルの扉を開くべきじゃないの? それなのに未だ自身の事に拘り過ぎてると、、、このジャケットの違和感はやっぱりこの結論に行ちゃう。


貴方は今までと同じスタンスが‘甘え’になってしまう程の女性になったんだよ

どうしてもこう思う。それに、No More Dramaという貴方はまだ解答に辿り着いてないじゃん。「Dramaなんて言葉は良くない。それじゃあ今まで真に支えてきたファンへの冒涜じゃないの?」と思ってしまうや。どんどん、コンセンサスとしてのR&B批評からかけ離れていくのは辛いけど、今更自分も逃げれない。


結局、垣間見ちゃったんだよね、あの糞バカJodeci時代のK-ciに
それはMaryJ.の2ndを聴きこんで見えてきた事。「一夜の女に取られてたまるもんですか、貴方を分るのは私だけ」って台詞が心に浮かんできたから。MaryJ.が何を見たのか、それを自分にダイレクトに伝えてくれたのが、Calvin RichardsonとK-ciのデュエットや、K-ciのBobby Womackのカバーだったから。確かにあの姿をあの時期に見れば、、抜けれないかも、、、とは思った。


結局、MaryJ.にとって初めて本気で好きになった相手がK-ciだったのだと思う。それが違うなら、もっと早めの時点で抜けれたと思うから。やっぱり、人ってそんな動物なんだよなぁ、、それなら「本気で好き」なんて一生認めない方が利口だが、「ああ、この人は今までそんな人生なんだろうなぁ」と思わせるオヤジも多いが、それでしか直らない自分がいるのも事実。まあ、あんなオヤジどもはいつか"釜茹で刑"でしょう。閻魔サマに期待(笑


やっぱり、見たかどうか? それが自分自身だけかどうか?は拘っちゃ駄目なんだよ
どうせ、「本当に好きなのはお前だけだ」とか言われて、ころっと騙されちゃうんだよなぁ、、人間、欲しい言葉を出された時ほど、やられる時は無いからなぁ。確かにそれは正しいと思うんだよね。あの時のK-ciがその姿を垣間見せてたのはMaryJ.だけだと思う。他にも該当者がいるなら、誰でもあっさり終われるでしょう。

けど、女性サイドから見ると、「お前だけ」に気を許しちゃ駄目なんだよね。って言っても、そんな中から上手く行く二人もある訳で、そんな話しを聞くと、「この人はいつか分ってくれる」と思っちゃうんだよね。「暴力振るっては謝るアル中男」みたいなモンだよなぁ、実際。だからこそ、


自身の力で引っ張りだせるかどうかが1番大切
それが出来るなら「後はその男を信じるだけだよ、完成品を求めることよりそっちの方が100倍マシだと思うから。だって二人で作り上げた信頼感がある」 それが無理なら、「君にそれだけのパワーは無いのだから、諦めよう。それでも好きならいつか再トライすべきだよ」が今の自分に言える解答です。結局、「垣間見てる」とは言っても、「引っ張りだしてる」のと「たまにこぼれてくる」の差は大きいよ。スカされる夜があるなら、やっぱり前者だよ。それでも、「引っ張りだしてる」と思いたがる人の性なんだが、、、


ホントの所で言えば、男に「負け」を認めさせれるかどうかなんだが
結局、それを認めれない男から全ての問題が始る気もする今日この頃。負けても俺にはお前がいると思わせれば、もう大丈夫。


ふーー、随分書いてしまったなぁ。一体いつになったらMaryJ.はこれを伝えてくれるのかなぁ。方向性は間違ってないが、それはTestimonyでも思うが、Soulの女王をDramaと言える理由だけには使わないで欲しいと思います。
どっちにしても、この地点まで来ないと、MaryJ.は真に全ての人に聴いてもらえるアーティストにはなれないと思う。「私のようになっちゃ駄目よ」と子供達へのメッセージを伝えるらしいが、大切なのは「真似しちゃいけない見本」じゃなくて、突き詰めた先の答えだと思うんだが。「駄目よ」ですんなり上手くいくなら、「女友達の忠告」の時点で、足を洗えると思うんだけどなぁ、、、ホント。

この答えはMaryJ.よりもK-ciが掴まえるべきなのかな? それなら余計期待できないなぁ
昔からぶっ飛んだ人間だったが、レビューも随分R&Bのメインからもずれてきなぁ、、と思ってしまう今日この頃っす。
けどなぁ、、やっぱり"Drama"という限り、MaryJ.は先に進めない気もしてしまう。「じゃあ何ならいいんだ?」と言われると困るけど、今思うのは「ステレオタイプ」かな。MaryJ.には悪いんけど。

"No More Stereotype"
こんなタイトルのアルバムだったら、もう1段深度が増したと思うのだけど。因と果からなるのがこの世だとするならば、その連鎖を絶ち切れるのが、Soulの女王だと思うから。
   
広がる「Go Ahead」
[2002/02/25]

No More Dramaのビデオクリップ見ました。凄かったです。MaryJ.全開。私は生意気なことを言ってました。Dramaという言葉にあれだけの想いを込めるとは。叫びまくりの腕振りまくりの、最終的には涙がこぼれてた。(YouTubeで見る)

結局、MaryJ.はとことん不器用な女性だね
そのビデオクリップを見ながら、ずっと痛感してた。全く浮気症の男ほど、相手が浮気すると動揺するかぶち切れるか、とにかく自身のことは棚に上げて相手がするのは許さないもんだが、MaryJ.は男のそこを突く様な行動は絶対に選べないだろう。彼女はどうしようもなく不器用なんだよね。唯一は「全てを受けとめる心」だけであって、これだけは誰よりもあるからこそ、今の地点に立っていると思う。Go Aheadと叫んだのは前作(Mary)のK-ciとのデュエットが初だと思うけど、あの曲ではK-ciに対して叫んでいたが、このNo More Dramaの曲でもガンガンに叫んでるんだよね。それが彼女が先に進んでない事を示していると思ったけど、全く違いました。

いつだって、彼女の歌う表情で教えられる
自分がMaryJ.を分り始めたのも7 Daysのビデオクリップだし、そしてNo More Dramaでも同じ位のレベルで教えられてます。彼女は近い人に私のようになっちゃだめよと言うことしか出来ない女性だと思う。けど、その不器用さが本当の意味を生んでるんだね。それをずっと繰り返しているからこそ、ここまで広がったんだなぁ・・・って今は感慨深い。

MaryJ.の軌跡はホントに宝の宝庫です。あのアルバムを聴き込んで、結局は「負けを認めれない男から全てが始まる」って思ったから。この空間から、マクナイトやStevie Wonderが何を切り出してくれるのかすごく興味があったりもする。恐ろしいほどの答えが出てくると思う。

けど、MaryJ.は違うんだよね。いつだって体当たりなんだよね。彼女が叫ぶGo Aheadの意味は「あっちいけ」になるのかな。こんな軽い言葉じゃ訳し切れない深さがあるのは当然だけど、彼女はこれをもっと突き詰めてる事が分った。だから今のGo Aheadには確固とした手触りの普遍性がある。このレベルの普遍性をGo Aheadを純化させて到達するのがMaryJ.の恐ろしさかも。全く、他の女性のビデオクリップを見た日には「映りを気にする前にちゃんと歌えよ」位の文句がこぼれちゃうものなのだが、特に若い美人の歌手だったら目も当てれないレベルなのだが、MaryJ.は正反対なんだよね。「ちょっちょっと待って。今すぐメイクするから」ってレベルの素顔なんだよね。30過ぎて、化粧ゼロの、叫びまくりの、髪乱れまくりじゃ、+5歳は確実に老けて見えるのだが、彼女はこんなのは歯牙にもかけてない。

確かに、あの光ゼロの世界はギリギリの空間。浸れば浸るほどそのヤバさが良く分る。

もう自身が好きかとか相手が好きかとかそんなレベルじゃないんだよね。「逃げるか逃げないか」のレベルにまで還元されてる。前に進めば傷ついて、後ろに下がれば磨り減って、どっちらを選んでもトコトン辛い。けど、MaryJ.はあそこでもう1歩踏み込んでる。その1歩の瞬間に道が開けてるから。

彼女は鬼不器用
P2S2H2はこの言葉をMaryJ.に捧げます。個人的には鬼視線の志向性なのだが、鬼不器用の方が偉大です。そりゃマクナイトの処女作やStevie Wonderの[Innervisions]に勇気付けられる人は、ホントに同じタイプだけだもんなぁ。けど、彼女の歩みは全ての人を勇気付けてるから。
間違い無く、彼女は因と果からなるこの世の連鎖を断ち切ろうとしてる。
そして1歩1歩達成してるね。
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