Leela James
"A Change is Gonna Come"
Soul Musicへの追悼歌
[2005/08/27]

Calvin Richardsonの2ndもA Change is Gonna Comeのリフを使った傑作曲だったけど、これだけ正面から取り上げたのはSoloの処女作から数えて初めての作品だと思う。あの作品は「Soulに殉じてる」というべき作品だが、この本作はまさしくSoul Musicへの追悼歌になる。カバーするだけでなく、まさかアルバムタイトルにまで持ってくるとはね。あの曲は気軽にカバーできる曲ではないけど、彼女は歌いきるだけの覚悟がある。

Soul Musicが完全に無くなった事を受け入れている
A Change is Gonna Comeは黒人の明日への希望を最高純度で歌った曲の一つだけど、まさか40年後にこういう逆照射の形で歌われるとはSam Cooke本人も想像していなかったんじゃないかな。それ位に覚悟に満ちたカバーになってる。P2S2R&Bのイメージで言うと、アフリカ大陸とアメリカ大陸の間にSoulの大陸があるアフリカ大陸に戻る訳にも行かず、アメリカ大陸で確実な根を張れてないからこそ、その間の大西洋に思念上であってもいいから、心の拠り所を求めた気がするから。マリアナ海溝の底にいるMaryJ.と同じくらいに幼稚なイメージだけど、それが素直な情景です。

永遠と思われたその大陸は、もう沈む事が分ってる。なのにSoloはその大陸に渡っていった。2作だけを残して。それが僕の言う「Soulに殉じてる」という意味です。VOODOOというD'Angeloはその向こうに新たなアフリカ大陸を作ろうとしてるかのようで。それが成功してるか僕にはよく分らない。その情景の延長線上で言えば、Leela Jamesはアメリカ大陸の海岸線を歩いてる。沈んだSoul大陸から流れ着く残骸を集めながら。。突き詰めるとそんな情景が浮かんでくるアルバムです。

Soulが衰退しているのは暗黙の了解なのに、誰も幕を引くことが出来なかった。そりゃそうだよ。追悼歌なんて歌えないのが当然だと思う。なのに彼女は正面から歌ってる。。そんな意味では恐ろしい作品と言えるのだろう。

何故、彼女は歌えるのか?

その答えは同じだけの傑作である2:Musicにあると思う。この曲があったからこそ、どれだけ裏ジャケが怖いにせよw、どれだけ音をひねり過ぎ?にせよ、買って当然の作品になってる。


Musicを突き詰める事で、再びSoulまで辿りつこうとする意志がある
聴き込むほどにそう感じるんだよね。Changeに逆照射があるのなら、Soulにも逆照射があるハズだ。彼女はきっと言葉にできてないと思う。けど心の奥底には明確な意志を感じる。2:Musicを何回聴いたか忘れた。久々にR&B-Timeで真正面から聴いたなぁ。彼女はこの実感を持ってるからこそ、Soul Musicへの追悼歌を歌えるのだろう。それが僕の結論。これだけのプロデューサ陣がついたのは彼女なら答えを見つけるかもしれないと思わせるだけのオーラを身につけているのだろうね。そんな彼女に対抗したかったのか、どうしちゃったの?という位に歌手の特性を横に置いた曲を提供してる気もする。Wyclef JeanやSaadiqといった大御所が自身の得意分野に固執してるもん。

その点で7:When You Love Somebodyは出来がいい。彼女の深さがよく出てる。恋愛Deepじゃないんだよね。中ジャケの赤い服の写真は同一人物か?と思うほどに幼い顔してるもんなぁ。8:Mistrading Meもいい。サビの歌いこみが圧巻です。バックの音がまたいい。これぐらい音数が少ない方が断然いい。確かに今の売れ線を圧倒的に無視してるけどね。売る為には彼らの作った曲も必要かもしれないけど、ここまで奇跡的なアルバムを作ったのに一作で退場にはならないでしょう。そしたら本当にSoul Musicが終わっちゃう。

あんまり9:Don't Speakは合わない。なんでだろう。一番本人らしさを感じるのが10:My Joyかな。それでも恋愛の「れ」の字くらいな情景なんだけどね。昔、Monicaがデビューした時も凄かったけど、歳のせいもあってSoul Musicをどの方向に引っ張っていくかについての意志がなかった。若くして有名になりすぎて、必要無いアルバム(2nd)を作ってキャリアをダメにした。その点で、Leenaには安心できる。この幼さに不釣合いな視線の強さが特に。めちゃくちゃです。表ジャケは20歳、裏ジャケは30歳、中ジャケは16歳ぐらいだもんなぁ。ホントに同時期の写真かな?

Kanye Westの曲もあまりこない。特に12曲目は音数が多すぎる。びっくりしたのがChucky Thompson。この13:Playerは非常にいい。有名プロデューサの曲の中では本曲が一番いい。上手に彼女に合うミドルを作ってる。やっぱり才能あるなぁ。サビでの吼えっぷりを引き出してるし、バックの声もあってる。曲でのHouu!!!がナイス。だからこそこの曲がA Change is Gonna Comeの前に来たのだろう。

シークレット・インタルード
シークレット曲自体はそこそこあるんだけど、インタルードをシークレットにしたのは始めて見た。この-2:05とかいう表示にはかなりびっくりした。普通は曲間を空けるために-2秒とかなのに。この部分はI know I've been changedって言ってるの? 聞き取れた方は教えてください。


以前に日本がSoulを担う国になるには、自殺者がゼロになればいいと書いたけど、これだけ意志と才能があればMusicから辿りつけるのかもしれない。確かに、この2:MusicはSoulに辿り着いてる。唯一の心配は何人がこの道に続く事が出来るか?かな。これは歌が上手いとかそういうレベルだけじゃ完全に無理です。
とりあえず、SamとSoloとLeenaのA Change is Gonna Comeを3曲並べたコレクト集を作って聴き込まなければ。

ちなみにアトランティス大陸と重ねているとか考えないでね。大西洋を何度も往復した奴隷船。それこそがSoulの洗礼なのだから。Soulの大陸とは彼らが詰め込まれた船底を並べたイメージです。そういうイメージはRootsを読んで初めてこの身についたかな。


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