Gerald Levert
"IN MY SONG"
GeraldのMiddle-UPの最高傑作
[2008/02]

Geraldの全作品の中で、G Spotと本作が最高傑作として双対だと思う。G SpotはどちらかというとSlowの曲が目立ったが、本作は間違いなくMiddleの曲がメインになってる。Middleがこれだけメインに来てるのは98年のLove&Consequence以来の9年ぶりの気もする。あの作品でGeraldを聴き始めた身としては、このMiddleの曲で表現されるパッションが懐かしかったです。

もちろんGeraldの作品の中での最高傑作というだけでなく、07年発売の作品の中で一番良いと思う。発売されるまではこれまでの未収録曲を集めた作品になるかと思ってたけど、全曲が新たに書き下ろした曲になってる。亡くなった後の追悼盤じゃない。もっとアクティブな作品。もしGeraldの生きていたら本作の良さでその先も+2作は作れる気がする。Geraldの遺作となった作品だけど、それを除いても確実に傑作です。

どうしても歳を重ねると曲のテンポがSlowになっていくから、このGeraldの歳でMiddle-UPの傑作が作れる事が一番の感銘です。リスナーの方も30歳を過ぎて若い歌手のMiddle-UPを聴くぐらいなら、昔聴いてた作品を取り出してくる方が多いと思う。だから、30歳以上が聴き込めるMiddleからUPの曲って非常に少ない。自分が持ってる中での唯一はLSG2かな。あれは確かに30歳以上じゃないと聴き込めない世界があった。けど、LSG2の歌世界は微妙に不健全なんだよね。あそこでも書いたようにチョイワルオヤジにぴったりの世界観。まあそれこそが30歳以上が聴く歌なのかもしれんがw

「この歳の状態で若い頃に戻れたら、あの娘とも付き合えたかも・・・」とフッと思うのが30過ぎた男というものだ
ってどっかの雑誌に書いてあった。確かに若い男はアホで当然と思うし、それから10年以上経って始めて正しい距離感が見つかるのだと思う。けど、そこをLSG2と共に突き詰めてもしょうがないと思うんだよね。若い頃に恋愛に恵まれてなく仕事が出来る人ほど社内で不倫?してる気もするが、R&Bにその曲しかないなら音楽ジャンルとしては未熟だと思う。
やっぱり

健全な家庭像とMiddle-UPが重なる地点

だからこそ本作が最高傑作です。聴き込むとぴったりの情景が浮かんでくる。一般的には健全な家庭像にフィットする曲としてはSlowが多いと思う。小さい子供もいるような若夫婦にフィットする幸せって、何気ない休日にゆっくり過ごすとか、そんな情景に似合う訳ジャン。けど、本作だけはMiddle-UPの雰囲気を掴み取ることに成功している。全く、こんなやり方があるなんて、思いもよらなかった。答えを見れば当然の世界だけど、誰も気づかない盲点のような地点。
だからこそ才能なのだろう。

高校の野球部のOBがそれぞれ家族を連れて川原でバーべキュをしてる。
食事をした後、子供のおもちゃの野球セットで何気なく遊びだしたら、父親たちの方が妙に本気になっちゃった。
ペコペコのボールで思いっきり投げて、プラスチックのバットが壊れるくらいに振り抜いてる。

そのうち、自然と高校最後の試合が話題に出て、余計に気合が入りだした。お互いに「あの時はお前が」とか言い合いながら、本気でかつ楽しんで野球してる。

それを奥さんたちが「まったくうちの旦那は・・・」って苦笑してる。
もちろん次の日はお決まりの筋肉痛(笑

こんな風景に似合うMiddle-UPなんだよね。確かに30歳以上が聴き込めるフェーズだよ。聴くまでは想像すら出来なかったけど、数回聴いてると自然と浮かんでくる情景がある。Geraldの中だけでなく、自分の持ってる作品の中で見渡しても、30歳以上の男に似合うMiddle-UPの曲としては、本作を最高とします。それ位に凄い。

特にいいのが02:I Don't Gwet Down Like Thatだね。バックの音はMiddleなんだけど、歌い方に寛ぎがあって、サビでは押し気もあって、そのバランスが素晴らしい。信じられないのが03:DJ DON'Tです。DJという単語が出てくる曲はチョイワルになりやすいのだけど、本曲は違う。何故か分らないけど違う。この2曲で最高傑作って分る。それ位凄い。もしバーべキュ&野球だけでなく、ラジカセ持ち込んで本作を大音量で流していたら、間違いなくリスナーの鏡です。

正しい時(歳)に、正しい曲を、正しい形で聴く
それこそがリスナー人生だと思うから。もしこれに該当する人はぜひ試してみてください。本作の真の価値が見えてくると思うよ。

05:FALL BACKもお勧め。叫び具合が最高。この曲も緑レベルです。06:DEEP AS IT GOESからslow寄りになるけど、曲がいいからそのまま聴ける。収録曲全体のレベルの高さではG Spotよりも上だね。点数つけたら本作は110点ぐらいかな。もちろん点数よりも浮かんでくる情景で作品を賞賛したいけれど、冷静にみてもそれだけの価値があります。


この1年以上、ぜひとも60歳の壁を越して欲しいと思って過ごしているけど、まさかここで人生最高傑作が生まれるとは・・・。ニュースとしては突然の死だったけど、本人は作成中に寿命が尽きるのを感じたのかな。そうとでも仮定しないと説明がつかないくらいのレベルの高さです。

08:SWEETERは純粋に落ち着いた幸せに満ちている曲。他の作品に比べても曲に魂がこもってる。こういうPOPS寄りの曲を聴くと特にそう思う。11:My LadayもMiddleの曲で完成度が高い。GeraldのMyBestを作るとしても本作から曲を取り出すことは無い。この作品自体がBestになるのだから。

---
突き詰めれば、本HPは正しい時に正しい曲を正しい形で聴くことのみを薦めているから。

たとえ途中でどんな軌跡を辿ろうとも、本作を聴くのに相応しい資格を持てるようになって欲しい。
Geraldもそれを伝えたがってる気が、ふっとした。

若い人はぜひ、このアルバムが描く情景を目指して過ごして欲しいです。
25歳から30歳までの人には特に。

逆に、30歳以上でこの情景が合わない状態の人も、やっぱり聴いて欲しいかな。
本当のSoulは踏み絵でなく、LiftUpなのだろう。後半のSlowの曲には、そう実感できるほど優しさを感じた。


HOME