Carl Thomas
"Let's Talk About It"
《明るいフェーズ》 ・ 《深化した寂寥感》
[2004/04/18]

2001年の処女作から3年目、随分長く待ってました。最近のリリースラッシュの風潮から言うと珍しいと思う。それが「大切に扱われている」からなのか、「レーベル自体がゴタゴタしてた」からなのかは良く分からないけど、結果としてイイ形になったと思う。前作があれだけ「大人の寂寥感」を突き詰めたアルバムだったからこそ、次回作は誰がどう見ても明るいフェーズに行く必要があった。けど、それを性急にすると、せっかくの良さが失われて、「HIT狙い」と「今受け」だけのアルバムになっちゃう。

本作全体を包み込む明るさは、、、彼自身の持ち味を失う事なく、少しずつ少しずつ円運動を描くように方向性を変えて行き、この明るさまで持って来た事の証左じゃないかな。それ位に自然な明るさを感じる。曲自体も派手さは少ないがイイ曲が多い。本人のプロデュース曲も格段に多くなったけど、それがイイ結果になってる。これって、売れた処女作の次回作ではあんまり無いんだけどね。より本人らしさをだそうとして、本人のプロデュースが増えて、ファンしか着いて来れなく事が多いから。けど、Carl Thomasは売れた処女作に本人らしさが詰まってたから。そこから、これだけの時間をかけた事で、自然な明るさを持ってくるのが可能になってる。期間が短かったり、他人のプロデュースだったら、どうしても作為的な面が拭えなかったと思う。

前作は、「傑作だけれども、この寂寥感は25歳以上」と断言してしまうだけの何かがあった。この四年間、取り出しては聴き続けれたけど、その核は未だにちゃんと分かってない。「ある種の諦め」を感じるからかな。歳をとるという事の本質はもちろん分かってない。けど、関節の動きがギクシャクするように、

心が動くたびに軋む音がする
と言われたら、「そうかもしれないなぁ・・・」って思う。そこまで表現されていたのが、あれだけの傑作になった一番の理由じゃないかな。そんな彼の軋む音と叫びは、不思議と僕らの心の潤滑油になった。そんな面が不思議といえば不思議なのだけど、それが芸術ってものだと言われれば納得するんだよネ。


年齢の枠を超え始めたCarl Thomas
なのに本作では彼は年齢的枠組みを超え始めてる。3: My First Loveはホントにタイトル通りの明るい曲で、どの年代の人でも聴けるんじゃないかな。声の表情において、素直で明るく、どこか子供っぽいと感じる。レーベルはゴタゴタしてたし、この輸入盤も開けたらパフィー?!の写真が入ってるだもん。とっとと移籍する方がいいと思うのだけど、それでも残ったのは彼の人間性かな。どちらにしても、この4年間、充実した日々を過ごしたのだろう。
7:The Bady MakenもR&B以外で有り得ないタイトルだけどw、エロさは無くて、ホント明るい。個人的に一番気に入ったのは、8:Dreaminです。本作の中で明るさにおいてTOPだと思う。ついつい踊りたくなるようなリズム感もいいし、なにより一番明るいと感じるから。


この時点で「こちらの想像を完全に達成した作品」で、かなりお勧めなんだけど、本作はもっと凄い。それがアルバムの後半 12曲目のinterludeからです。11:All You've Givenからちょっと雰囲気が違う。この曲は前作に収められていても当然と思える位の曲だと思う。そして、13曲目から最後までが信じられない。

深化した寂寥感
こうとしか表現できない世界になってる。あの寂寥感の時点で現在のR&B男性ボーカリストのTOPだったのに、そこからもう1歩深くなっている。そして、何よりも凄い事は

年齢の枠を超えた寂寥感
そんなの存在するのかよ、、、、って思うけど、やっぱりこうとしかいいようがない。前作の「25歳以上の寂寥感」は完璧に浸る事ができた。自分は22歳の頃だったから、嬉しいのか悲しいのか良く分からなかったが、とにかく彼の言わんとする事がありありと浮かんできた。けど、もっと深化した本作では無理です。正直に言うと、振り切られてます。

「帰り道を変えても、あの娘に会えないよ・・・動いたからこそ余計に寂しくなってるや」って寂しさの萌芽を感じる中学生や、、、「最近、周囲に彼女が出来て、無性に寂しさを感じるや。寂しさって《無い》事から始まるのでなく、《無いという事を知る》事から始まるのか・・・」って思ってしまう高校生にも届く曲だと思う。

特に、12:Reboundの声の表情は若い。というより、年齢どうこうの世界を超越してる・・・・
こちらの想像までも振りきってる作品になってる。15:That's What You AreはInteruldeと書いてあるけど、この深化した寂寥感の先の明るさを垣間見せる曲だと感じる。そんな意味では、分からない中でもぼんやり見える事ってある。

発売前から惹かれていたジャケだけど、明るい所に立ってるCarl Thomasだけど、壁は真っ暗な奥まで続いてる。確かにこのアルバム全体を切り取ったジャケだよ。そして、彼の表情はお世辞時も明るくない。眉間の皺は真中に一本くっきり入る人と、眉毛の両端に二本入る人と、おでこ全体に入る人がいる。彼は確かに3番目だね。

25歳以上で眉間に皺の出ない人はそれまでの人生で見詰めた量か努力してきた量が少ないと思う。個人的には男性歌手だろうが女性歌手だろうが惹かれないな。(MaryJ.レベルの眉間の皺なら流石にびびるが) そしてこの皺と瞳は・・・うーん、やっぱり振りきられているなぁ。


ということで、あっさりこちらの想像を超えた作品。この明るさだけで賞賛ものだけど、それ以上に深化してる。ヤン吉様が「コンサートでこちらがあんぐりするぐらい腰を振ってた」(直リンクすみません)って書いていらっしゃったけど、そんな面は何処にも無いぞw うーん、彼の器はどこまであるのだろう?? こういう出会いがあるから、聴きこむのがやめれないんだよね。1年後のアルバムコーナーまでに出直してきます。
一年経ってもうちょっと聴き込めました。アルバムコーナー


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