Calvin Rishardson
"2:35PM"
新たな大地
[2003/10]

余りにファン過ぎるので、何を書いても客観性が無くなるからイヤなのだが、、、やっぱり、リチャードソンだから。経緯を知らない人が見れば、「格好つけてるジャケ」と映るだろうけど、事の顛末を知ってる者からすれば、極限まで削り込んだ姿を思わせる。渋さと色気が奥に詰まった処女作から打って出て、マスマーケットを狙った面が凝縮されてる。実際、1:Keep on Pushin'はイントロから"A Change is Gonna Come"を召喚してる。続くFalling Outも文句無し。本アルバムはサディークも数曲絡んでいるけど、個人的にはあまりサディークらしさは感じない。全体的にリチャードソン節に染められていると思う。続く3:I've Got To Moveもホントにナイス。リチャードソンが歌うUPってのはこうあるべき、っていう見本みたいな曲だと思う。クラブ・プレイからは遠いけど、こんなアップでドライブすると激ハマルと思うから。この曲ならパンチ力も大でしょう。店よりもキャンプ場とかアウトドアが似合うのは、リチャードソンらしい。

自作曲も多いのだけど、全曲にリチャードソン自身が1st-Producerになっているから、曲毎の段差は感じない。処女作のように、色んなプロデューサが彼の良さを引き出したのと違って、あくまでパーソナルな作りになっていると思う。そこが惜しいといえば惜しいんじゃないかな。マスマーケットをターゲットにするなら、もうちょっと毛並みの違う曲を提供してもらった方が、広い範囲に売れる作品になると思う。けど、自身の子供が生まれた時間を記念したアルバムタイトル"2:35PM"なのだから、もっと個人的な面を突き詰めたかったのかも。ファンとしては文句無しの作品なのだが、広く売れるかどうかは分からない。色んな面を考えると、前作並になるかもなぁ、、、とは思う。どれだけKeeep on Pushin'が引っ張ってくれるかが、セールスの可否を分けるのかな。

4:"I'm Worthy"もリチャードソンの明るさが前面に出てると思う。ジャケの色合いは渋いけど、全体的に明るい曲が多いアルバム。 Angieの2作目に収録されて、サントラでは二人でデュエットしてたMore Than a Womanも、5曲目に1人で歌って収録してあります。てっきりデュエット・バージョンが収録されると思っていたのでびっくり。まあ、リチャードソンが女性を泣かす訳も無いので、あんまり心配してないのだが。6:"Not Like This"も明るいんだよねぇ。


奥ゆかしい魅力が前面に来てみれば、まぶしい位に明るかった
そんな手触りで、、、このジャケはKeep on Pushingには合うのだけど、あんまり売れる色じゃないとは思う。コアなファンは飛びつく土臭さなんだけどネ。そんな意味では、もうちょっと明るくしても良かったのかも。この曲、オーソドックスな明るいバラードで、その分だけリチャードソンの魅力が味わえると思う。R&Bにちょっと興味の方には一番いいかもネ。

7:"She's Got The Love"が一番サディークらしい曲。D'Angeloとかが歌いそうな曲だと思う。リチャードソンの熱いフレージングと合うかどうかは意見が分かれる気も。D'Angeloのような少し離れた距離感覚がない分だけ、個人的には迷ってます。8:You Got Me High、9:Put My Money on Youも同じように新しいタイプの曲に挑戦してると思う。自分はまだ浸れてません。10:Your Love Isは一転して彼らしい曲。こんな熱さが似合う人なんだよね。バックコーラスの「ドゥルルウルー」が決まってる。

ShvaShavaが無くなった事
ホント、どうしちゃったの???っていう位に必殺のShavaShavaが無い。けど、それもリチャードソンの意思なのかぁ、、、って思った。あのアドリブはもう十分広がったから、今回は全く別の場所で勝負したかったんだと思うから。彼の中の意地が満たされれば、またシャウトしてくれると思うから。それまで待ちたいです。

I Want More
実はKeep on Pushin'よりも密かに惹かれたのが、この11:"I WANSUMO"です。処女作も含めて、一番あっぴろけだと思う。色気も糞も何もない。そんな意味では、突き詰めたKeep on Pushin'よりも勝負曲だと思う。R Kellyの"When a woman's fed up"やKeithの"I'm not ready"と同じ位の裸度数だと思う。慌てて歌詞を見たら、こちらの想像以上に凄かった。

Listen, now I may never be a super hero
'Cause in this world we live in
I'm just an average negro
誰もが心の奥底で思っていても歌えない事ってある。アルバムのセールス的に見れば、第一線にいるとは決して言えないリチャードソンだけど、まさかここまで歌うとは思わなかった。本サイトにとっては誰よりもSuper Heroなのに・・・ ビタ一文、甘さがない自己認識だけが明日を連れてくるのなら、、、そこで卑下されるのが怖くて言えない一線を超えれるのなら、、、、やっぱり未来は輝くと思う。そんな意味では、この曲をもって、今まで以上にリチャードソンがイイ男だと実感した。生まれてきた子供と奥さんは今後の彼の大地になるんだろうなぁ、、、ってこちらまで、じーんとしてしまう。

どっかの誰かみたいに売れなくなったら、浮気するしか能が無いのとは根本的に格が違う。曲的にはカッコ良くないんだけどね。このバックトラックはチープだと思うのだが、それ以外の全てがカッコイイと思う。これでこそイイ男。リチャードソンと同じ年代の男性には全員にお勧めです。

Samを好きな人ほど、リチャードソンにハマルと思う。そんな意味での「新たな大地」なのだけど、、リチャードソン自身も2:35PMに女性の偉大さを感じたのだと思う。今まではカントリーマインドとShavaShavaを支えに歌ってきたけれど、これからは変わって行く気がした。ShavaShavaでなくI WANSUMOを持ってくるのが真のイイ男なのだと、今はそう思う。


こんだけ誉めたんだから、くれぐれも離婚しないでくれよぉぉ。最近、みんなポンポン離婚してるからなぁ。特にBrandy。あんだけ誉めたこちらの事もちったー考えてくれ。まったく、旦那が15:Love Wouldn't Count on Meに不満もったのかもしれんが、そんなの思うのは糞だぞ。ああやって歌いきる事で終わりにするしかない話もあるというのに・・・そんなちっぽけな心でどうするんだか。わだかまりを持つなとまでは言わないが、Nothingの時点で捨てるべき。

もちろんリチャードソンには3作目でShavaShavaかまして欲しいです。今までずっと、契約切られてもオフィシャルHPも無くなっても、ShavaShavaがあるから大丈夫だと信じてた。今回はKeep on Pushin'があるから、大丈夫だと信じてる。もし作れるチャンスが来たら、絶対に傑作を作ると思う。それ位のI WANSUMOです。



それにしても、当然、社会的なテーマを歌っていると思ったので、昨日初めてKeep on Pushin'の歌詞を見て、び、びっくり。A Changes is gonna comeのリフからどんどん本人らしさを出しながらも、その本人らしさがSamとオーバラップする。それ位の器の大きさを見せつけた曲だけど、まさかあんなフェーズを歌っているとは・・・そもそもリチャードソンはそんなことしない気がするぞ。K-ciが歌った日には切実感ありまくりになるだろうけど、この曲からはリチャードソン本人の痛みは感じない。それでもあえて歌ったということか。A Changes is gonna comeのリフを使ってこの歌詞で。誰の発案か知らないけど、本気、恐ろしいことをする。僅かでも足らなかったらSoulの冒涜もいいところなのに・・・

Soulをえぐる形としてはD'Angelo以上じゃないかな。本作をもって次も作れると思ったけど、これなら3作は約束されたかも。この曲の歌詞こそが今のアフリカンアメリカンの男性の現実であって、リチャードソン本人はしてないからこそ歌いきれたのだと、、、ふっと思った。本気で売れるためにはR Kellyがエロを選んだように、Joeがギンギラギンを選んだように、何かを選ばなくちゃいけない。これがリチャードソンの選んだことなのか。それでこれだけHITさせてるんだから、ほんと凄い。
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