Brian Mcknight
"GEMINI"
歌い続けることに意味がある
[2005/03]

正面顔ジャケが一枚もない歌手だから、本ジャケを見た時は「また横顔ですか、、、」ってショックを受けてた。けど、この表情は処女作に似た手触りなんだよね。前作のジャケと比べれば確実に上。売る事をビタ一文考えてないようなジャケな前作だけど、そこそこイイ曲は揃ってる。ところがアルバム全体としては「混乱」なんだよね。タイトル曲のU-Turnがまさにそう。その点で比べて本作は背骨が通ってる。それが、「歌い続けなくてはいけない」という意志だと思う。

2,3枚しか歌ってない歌手にこの方向性を出されてもあんまり感動しないが、マクナイトはもう大御所だから。発売したアルバムの枚数も歌い続けてる期間も90'S前半にデビューした歌手の中でTOPクラス。けど、やっぱり誰の人生にも色んなことが生じて、いつも歌える気持ちでいれる訳じゃない。だけれどもやっぱり「歌い続ける」必要がある。突き詰めるとそれだけしかないのが歌手だと思うし、それこそが誇りの源だと思うから。

「もし引退したら、奥さんは戻ってくるのだろうか?」なんて事をマクナイトがウンウン悩むのも想像できないが、痛みを共有できない弱さは本作でやっとなくなったと言えるのだろう。Back at Oneじゃ"Are You Lonely For Me"って余裕ぶちこいてたのにね。今のこの時点で言った日には離婚訴訟の賠償額がハネ上がるぐらい結果にしかならないから。

アルバムを買って2:What We Do Hereを始めて聴いた時は「いつもと変わらない」と思った。「今回は違う」と感じたのは、5:Everything I Doや6:Here With Youからです。

リゾート地に1人で佇んでる笑顔が浮かんできて、このジャケそのままの手触り
マクナイトの良さが明るさと供に出てるけど、何処かで物悲しい。物悲しさを見せようとしてないのに手の隙間からこぼれて来る感覚はかなり嬉しかった。見せれる傷みは痛みじゃねーよ。ぶっちゃけ見せてる傷みなんてのは、相手を測る意味しかない。

7:All Over Nowの明るさもいい。横顔だけでなく瞳を帽子で隠しているジャケに不満大だったけど、ここら辺の曲を聴くと、口元に浮かぶ微笑とリンクする。けど、瞳は笑ってないのだろう。そんな奥深さを感じてる。色々連れてきました感がありまくりの8:SHEだけど、悪くない。前の曲よりも声に痛みが増えてバランスが取れてる。9:Stayは前の曲で変わったのを戻す役目かな。

最高なのは10:Come Backです。そのまんまのタイトル。この曲が無かったから前作は駄作だったのだ。これほどまでに痛みが表現されているのに、R KellyのDeepな曲よりも聴き込める人は多いだろう。それがマクナイトの積み上げてきたモノだし、、メロディーラインと痛みのぶつかり合いが新たな地点を見せてる。

処女作から数えて、始めての悲しみ
1:24のバックの金切り音が最高。これ以上長くても短くても効果は半減したと思うから。曲の途中でMarvin GayeのOHHという声を参照しながらも、あくまでも個人的な話に引っ張ってきてる。その切実感も好きな点です。

Jazzタッチの12:Your Songはかなりいい。元々、Jazzアルバムとの二枚組みの予定だったというが、この曲を聴くと凄くそちらも聴きたくなる。双子座というタイトルがずっと謎だったけど、二枚組みをさしてGeminiといっているのならば、2枚目も聴けないと片手落ちになるよね。僕ははJazzは好きでも嫌いでもない。コメントできるほど聴いたこと無いけど、R&Bのアルバムを聴いてると、「あっJazzタッチの曲だ」って思うことはよくある。このアルバムはマクナイトの声が処女作にあるJazzタッチの曲と同じで、かつ違っていて、その影模様が好きなんだと思う。

Lordとは言ってないが、Fatherというフレーズが印象的なのが11:Me&Youです。歌詞カード見てないからよく分らない。もうちょっと聴きこめば、見えてくるかな。

改めて聴くと3:Evertime You Go Awayはいいと思う。いつになく声に力がこもってる。余裕かましてた頃にはあり得なかった激しさ。「君が戻ってこなくても、僕は前に進んでいかなくちゃいけない」って歌ってる気がするけど、まだ歌詞カードを見る気持ちにならないので、そこら辺は不明。歌手が何を歌っているかじゃなくて、歌手と自分の間に何が浮かぶかの方が大事だと思ってるから、まあそんなペースにはなるんだけど  処女作のGoobye my loveら辺にかなり近いと思う。4:Grown Man BusinessはSuperheroからの身につけた歌い上げだけど、なかなかナイス。ここら辺の歌い方はマクナイト独壇場だね。

裏ジャケを見る。口元も目元も笑顔だけど、眉毛の辺りにはかなり痛みが積み重なってる。じゃあ目元を隠してる表ジャケはもっと泣いてるだろう。最近はこのジャケを見ながら、マクナイトの瞳を描きながらアルバムを聴いてます。


改めてマクナイトの全作品を聴き直してました。曲の出来としてはU-turnは悪くないと思った。一曲だけ取り出して聴くならナイスな曲が多い。仕事帰りのOLにお勧めなI remember youは悪くないけど、本作の次はもう1歩踏み込んで欲しいかな。
このアルバムと1stを対比させて、もうちょっと1stが分った。二十歳の頃、1stに対して、

ただ、彼のアルバムはそれにもう一つプラスが在ります。レイド・バック感とは別のものが。それに一番 惹かれているんです。
それは何ですか。
聞けば、きっと見えてきますよ。

って書いたけど、それは「未練切り」だと書いたけど、やっぱり何かが違うんだよね。未練切りというのは彼の動作であって、最深部にある感情ではない。あのアルバムにあって本作にない一番大きな点は、

《熱さ》
あの処女作に熱さを感じる人もそんなにいるとは思えないけど、やっぱりあれは一つの熱さなんだとやっと分った。その熱さを寛ぎに置き換えれば本作になる。K-ciオンリーには分らないだろうが、リチャードソンも熱さを抱えてる。マクナイトの処女作もそう。リチャードソンの「欲しいという感情からF***ing を抜いた熱さ」に加えて、冷静な視線と終わった直後の痛み。そんなブレンドがあのアルバムになる。結局、そこに僕はずっとずっと惹かれていたのだろう。
アルバム点数はこちら
  
[2005/03] Weekly Comment

あーもう01:30 明日も会社だ。寝なくては。。。
Geminiが届いたんで、早速聴いてました。マクナイトレベルになると最初に流して、気に入ったらR&B-Timeなんてstepはしない。一 気に聴き込む。学生時代だったらこのまま朝まで聴きこんで、自分自身を一気に変えれる位の力を手に入れれるのになぁ。学生さんには言っておくけど、ほんと今のうちしかないよ。今のうちしか。

朝、会社に行く時もヘッドフォンで聴いてたけど、改めて聴くと、一曲目からコンセプトが貫通している気がする。これから毎晩聴き込めば週末に書けるんだけど、もう一段階、深掘り出来る気もする。6:Here With Youを聴くと、混乱に満ちていたU-Turnから歩いている事が分ると思うよ。一番イイのは断然、10:Come Backでしょう。この歌い方はMarvinを参照しているけど、それをこれだけ悲しみの方にひっぱてきている。処女作から数えて、初めての悲しさになるんじゃないかな。

そうそう、社会人になって一つだけイイことがあるとすれば、「自力で稼いで暮らしてる」になると思う。 色々と悩んでいる人もいるだろうけど、働いて・暮らしていくことに勝るものは無い。昔はそれだけで立派な価値があったのにね。先の大戦後から当然のレベルと見なされるようになった。けど、どれだけ日本自体が裕福になったとしても、やっぱり社会にもまれながら、働き、そして暮らしていくのはやっぱり価値があることだと思う。そのラインはハッキリさせた方がいい。で、社会に出て何年か働いた後に、無性に勉強したくなったら、大学とかにでも入ればいいんだと思 う。

最近は引きこもりだけでなく、ニートとか社会現象になってるけど、そんな人たちも此処に来てると思うけど、その気持ちはよく分る。オレッチもよく留年しなかったっていう位だからなぁ。あの頃は、「こんなグタグタ言ってる暇があったら、青年海外協力隊にでも入ればいいんだ」ってよく思ってた。それよりは古武術してR&B聴く方を選んだ訳だけど。Jazzタッチの11:Watcha Gonna Do?もいいし、13:Me & YouはLordの曲としていいと思う。ジーザス、ファーザって言葉が印象的な曲。マクナイトのアルバムは、Jazzタッチの曲とLordが最後にあれば傑作なんだよ。それが一番簡単な測り方じゃん。

このアルバムを聴けば、そういうシンプルで、一番大事な事が分ると思うよ。「そこそこバイトすりゃ、誰でも暮らしてけるじゃん。それに何の意味があるんだ よ」って思う人ほど、このアルバムを聴けばいいんじゃないかな。瞬間的には意味のないことでも、続けていけば意味が出てくる。そして昔よりもちょっとはマ シにできるようになる。その積み重ねだけなんだよね。そういう思考を出来るかどうかが、別れ目になる気がする。


HOME