AALIYAH
"AALIYAH"
"A"にまで削り込み、楔を打ち込むように歌う姿
[2002/02/11]

衝撃的な彼女の墜落死がアメリカを包んだけれども、それ以上に衝撃的なテロ事件が起こったのには言葉を失った。AALIYAHファンの誰もが、それを聴いた時に「どうしても覆い被さっちゃう面がある」とは思ったんじゃないかな。けど、彼女の不在はマジソン・スクエアー・ガーデンでのGod Bless Americaにおいても明確に意識されただろう。彼女はそれだけのキャリアを築きあげていたのだから。彼女が生きていれば、必ず輪の中心にいたと思うから。

ニュースを聴いた時に真っ先に思ったのは、彼女のセルフタイトル・アルバムが新作として発売されていた事に対する安堵感だった。どれだけ銀幕で活躍しても、セルフタイトル・アルバムが残ったのは本当に大切な事だろう。

個人的には、恐ろしき10代と形容された[AALIYAH,Brandy,Monica]の中ではMonicaファンなので、Cool過ぎるAALIYAHには微妙に合わなかった。だってAALIYAHの何処にもどうしようもなさなんてないもんなぁ。けど、1番、自分自身を見詰めていたのはAALIYAHだろう。そんな意味でも微妙な位置付けだったのに、衝撃的な最後になってしまい、余計コメントできなくなっちゃった。で、ずっと伸ばし伸ばしになっていました。すみません。




このアルバムから、AALIYAH自身を明確に切り出すのは難しい。Janet Jacksonの"Rythm Nation"と"Janet."の間にある様な位置付けのアルバムで、この先キャリアを積んで行けば、きっと全ての人が認めざるを得ないアーティストになったと思うんだが。そんなAALIYAHの将来像はやっぱり見てみたかったな。未だにプロデューサの影に隠れる面があるのは不本意でもあるしさ。

初めて聴いて真っ先に思ったのは、ティンバラント達が作りだす音との相性が、2作目よりも断然に増している事。ティンバラントが作りだす音世界は、空間を横に押し広げるような歌い方とは合わないと思う。ここら辺はもっと色んなタイプのアーティストに彼が曲を提供してくれればもう少し分るが、誰がどう見てもMonicaとは合わないもんなぁ。

セルフタイトルのアルバムなのに、彼女は「AALIYAH」以上に自身を削り込んでいる様に思える。下手な色気がゼロの世界というよりも、その先をガンガンに進んでいるという印象で、、、彼女の歌世界に浮かぶのは"A"という一文字だけ。ここまでやるのがAALIYAHなのだと自己規定している姿は、本当に惹かれる。野良犬も食わないような自作曲という方向性がゼロなのも気に入ってる理由の一つだしね。特にTry AgainやWe need a resolution等の強力曲になるほどAALIYAの削り込みが上がっていると思う。

「この先ティンバラントは心を開く事があるのだろうか?」とたまに思う。きっと彼は同じくDevanteの下で苦労した人達しか仲間として認めてないだろう。その点でAALIYAHを確実に仲間と認めていた。けど、ティンバラントはこの先、「これだけの削り込みが出来る女性アーティストとめぐり合えるのだろうか?」と思うと、やっぱり悲観的にならざるを得ない。もちろん映画での成功がその削り込みをより完璧なものにしているのは間違い無い。けど、削り込まなくちゃいけない事を認める勇気を全ての人が持ってる訳じゃない。それはゼロから出発する勇気を持つ人だけが出来る事なのだ。

あの3名の中で歌手としての能力が1番劣っていたのはAALIAYAHだけれど、それを認める勇気を持っていた事を示した彼女の事は好きです。モニカはそこに安住してるとどうしても思っちゃう・・・。

MissyにアーシーなR&Bアーティストとして活躍して欲しいと常日頃から願っているけど、それは多分あり得ない話だろう。そうI care 4 Uを聴いて思った。AALIYAHは女性としての姿をMissyから学んでいるね。だからデビュー時に感じた鼻につく面がゼロだもん。Missyも自身で歌う事よりも、AALIYAHに託したんじゃないのかな。この曲を聴き込む程にそう思う。そんなMissyのスタンスは結構好き。MissyもTimbalandと同じ位に喪失感にさい悩まされているだろう。

色々哀しくなるアルバムだね。
素直な等身大のAALIYAHを1番感じるのは、やはりIt's Whatever。この寛ぎ感はナイス。やっとAALIYAHが分ったと思う。このアルバムは扇の柄の様な感覚で、ここまで削りこんだ先に、次回作で何を肉付けしていくのか物凄く見たかった。


もちろん、このアルバムはR&Bの入口に追加です。

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